電王戦第四局 塚田泰明九段 対 Puella α
24点法で、点数で圧倒的に不利な塚田九段が粘って24点獲得し、持将棋となった。
Puella αの(というか現在のコンピュータ将棋の限界として)持将棋対策が不十分だったこともあり、
塚田九段が10点近く足りないところから引き分けに持ち込めたということで、塚田九段の執念とかを感じた人もいるらしい。
しかし、これは茶番である。
塚田九段は勝てた。
勝てる将棋を放棄して、これ以上やるとしんどいので引き分けにしましょうと提案したのだ。
これは塚田九段が勝負師として死んだといっても良い。
ではなぜ勝てたか。順に見ていく。
電王戦には256手規則という特殊ルールがある。
以下にルールの内容を記す。
○ 256手規則
256手目が指された時点で、対局は立会人によって止められる。そして、立会人は下記(A)〜(C)の状況を勘案して、対局続行、引分けまたはどちらかの勝ちを裁定する。(A)両方入玉・・・24点法に則って、対局続行又は立会人が裁定を行う。
(B)片方入玉・片方未入玉・・・対局続行又は立会人が裁定を行う。
(C)両方未入玉・・・対局を続行する。※入玉とは、自玉が敵陣3段目までに進んでいる状況を指す。
256手を過ぎて対局が続行された場合、立会人は形勢に大差が着いたと判断した時点で、局面を止めて勝敗の裁定を行う。256手の時点およびそれ以降の局面での立会人の裁定は、対局者双方とも拒否できない。
立会人の裁定が、分かれた場合は連盟側の立会人の裁定を以て決定とする。ただし16時まで上記の引分けにあたるものとなった場合、千日手の場合と同様の方法により、指し直しとする。
256手規則により、相入玉の場合、24点法が適用され、対局者は裁定を拒否出来ないとある。
この場合、双方24点あれば有無を言わせずに引き分けである。
これでは塚田九段は勝てない。
ここで、256手目に塚田九段は玉を敵陣4段目に戻し、
にする必要がある。これは終局時の局面から可能であったと考えられる。
ここで重要なのはこの一文。
立会人の裁定が、分かれた場合は連盟側の立会人の裁定を以て決定とする。
つまり、256手目、連盟側の立会人が続行と裁定すれば、続行が可能であった。
そしてこの一文
256手を過ぎて対局が続行された場合、立会人は形勢に大差が着いたと判断した時点で、局面を止めて勝敗の裁定を行う。
形勢の大差に明確な基準は無い。よって連盟の立会人が続行と裁定すれば、延々と続行が可能であった。
ここで仮に、形勢に大差がついたというのを、片方の点数が24点を下回ったということにする。
この基準は自然であり、問題ないだろう。
ここで終局時の局面を見てみる。
Puella αの大駒が盤上にあり、Puella αの駒取り合戦の下手さは棋譜を観れば分かる通りである。
駒取り合戦を何百手も指していけば確実に大駒を取ることが出来た。
つまり Puella αの点数を24点未満にすることが出来た。
Puella αの点数が24点未満になれば、連盟はいつでも形勢に大差がついたとして、塚田九段の勝ちにすることが出来た。
以上が塚田九段が勝てた理由である。
私は塚田九段に何も難しいことは注文していない。
256手目に玉を敵陣4段目に戻すことと、延々駒取り合戦を続けることだけだ。
これだけで、塚田九段は勝てたのだ。
塚田九段が真剣に指していないと感じても仕方がない。
注目される一局に負けなくて良かった。
自分の対局で人間側の負けが決まらなくて良かった。
という気持ちしか感じられなかった。